アラムコがサウジ国内上場承認、12月5日に売り出し発表
アラムコの新規株式公開(IPO)は、経済の石油依存脱却を目指すサウジの事実上の最高権力者ムハンマド皇太子が打ち出した改革の目玉です。上場で得た資金で政治や経済、社会の諸改革を一段と推進する方針ですが、今回の上場はサウジ自体の財政の苦しさを示しているといえます。
アラムコは9月中旬にサウジ東部の2カ所の石油施設が何者かの攻撃を受けました。生産量が一時半分以下に落ち込みましたが、その後は攻撃前の水準へ早期に復旧し、アラムコは3日の声明で「事業や財務状況などに大きな影響はない」と強調しています。アラムコはサウジ国内での上場後、海外でも上場を検討しており、東京証券取引所が有力候補に挙がっています。ただし、アラムコのルマイヤン会長は、「現時点での海外での計画は未定」としています。
9日にはサウジ国内の証券取引所での新規株式公開(IPO)に関する目論見書が公表されました。個人投資家に0.5%を割り当てる見通しとなりましたが、機関投資家向けを含めた全体の公開株式数は明らかにされていません。売り出し価格は12月5日に発表されます。
取引開始日は「全ての法的要件や手続きを満たしてから始める」として明記していませんが、中東のメディアは12月11日と伝えています。サウジ政府はアラムコの企業価値を2兆ドルと試算していますが、市場ではこれを大きく下回るとの指摘もあります。
一方、イランがここにきて再び強硬姿勢を強めています。中部フォルドゥの核関連施設で新たにウラン濃縮活動を再開するための準備を進めたと報じられています。15年に欧米などと結んだ核合意では、フォルドゥでの濃縮活動は一切禁じられています。イランは合意から離脱した米国に対抗して合意規定の逸脱を続けており、今回の再開は低濃縮ウラン貯蔵量やウラン濃縮度の上限を超えた措置に続く第4弾の逸脱行為となります。
また、イランが同国内で核関連活動の検証に当たっている国際原子力機関(IAEA)の女性査察官を一時拘束していたと報じられています。15年にイランが欧米などと核合意を結んだ後、査察官の活動がこのような形で妨害を受けるのは初めてのようです。報道によると、査察官は先週、核施設のある中部ナタンツで、渡航文書を没収され、短時間拘束されたもようです。
このように、イランは危険な道に進み始めたようにも見えます。
一方、国際原子力機関(IAEA)は急きょ理事会を開き対応を協議し、度重なる合意逸脱や別の施設への査察官の立ち入り拒否について、米国と欧州は強く抗議し、緊張が高まっています。米国代表は理事会で「イランへの忍耐はもう時間切れだ」と強調。立ち入り拒否も「悪意ある挑発」であり「報いを受けるべきだ」と断じました。
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