コロナ恐慌回避への道は2つだけ
それには2つの道しかありません。米国を説得し、他国と協力して再びグローバル化に戻す努力をするか、内需主導の経済運営に切り替えることです。
しかし内需転換もそう容易でありません。多くの企業はグローバル化の中で国際競争力を高めるべく、賃金など人件費を抑制し、海外現地生産、海外部品の利用を進めてきました。これ自体が内需抑制をもたらします。
政府もグローバル化を前提に輸出企業優先の円安誘導をしてきました。これは一時的に株を押し上げましたが、内需にはマイナスです。
反グローバル化に対応するためには、政府も企業も頭を切り替え、輸出よりも内需にプラスとなる政策に切り替える必要があります。
企業は労働分配率を適度な水準に戻し、労働者に応分の還元をし、政府日銀は交易条件を改善し、内需にプラスとなる円高を受け入れることです。
「油断」や海外からの供給が途絶えてもいいような、エネルギーも含めた自立型、自給自足型経済に転換する必要があます。
その点、日本の賃金水準はかつての「割高」を失い、東アジアの中ではあまり変わらず欧米よりはむしろ安くなっています。
国内回帰で国内の生産雇用、投資を復活させる条件は整いつつあります。そこでは円安よりも円高が有利となります。金利の正常化も内需にはプラスに寄与します。
食料安保の不安も
その中で緊急を要すのが、食料自給率の低さを修正することです。
日本の食料自給率は37%台で、世界の主要国では突出して最低レベルにあります。コロナの制約があったとはいえ、国際的な物流が途絶えることで日本の食生活が危機にさらされるような事態は何としても回避する必要があります。
農産物の輸出が増えていますが、まずは国内需要を優先し、余剰能力分を輸出に回すのは問題ありません。
しかし、黒毛和牛や日本のイチゴなど果物の種子を中国や海外に輸出する前に、国内の産業保護、消費者保護が優先されるべきで、食料自給率を欧米並みの8割以上に引き上げることを優先的に考える必要があります。
日本はかつて「ABCD包囲網」で日本への供給が遮断され、苦し紛れに海外資源を求めて戦争を余儀なくされた苦い経験をしています。軍事的な安保のみならず、経済安保、食料安保についても十分な配慮が必要な世界になりつつあります。
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『マンさんの経済あらかると』(2020年5月25日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。