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日本も追従する?中国で地方都市・農村向けビジネスが大流行しているワケ=牧野武文

三級都市以下と農村に人口が集中している

中国では、都市のランキングが発表され、都市のクラス分けが一般にもよく知られています。第一財経というメディアが毎年発表しているもので、170種類の商品の販売データ、19のネットサービスの利用データなどから、中国338都市の購買力や消費力を序列化したものです。

トップ4は、北京、上海、広州、深センで、一級都市(中国では一線都市と呼ばれる)と呼ばれます。その次は二級都市となりますが、二級都市の中から成長力が目覚ましい都市が現れてきていることから、2018年から「新一級都市」というクラスが新設されました。新一級都市は、成都、重慶、杭州、武漢、西安、天津、蘇州、南京などの15都市です。

以下、二級都市が30都市、三級都市が70都市、四級都市が90都市、五級都市が129都市となります。

このうち、三級都市以下と農村が「下沈市場」と呼ばれます。

しかし、不思議に思う方もいるのではないでしょうか。都市ランキングは基本的に消費力で決められています。つまり、三級都市以下の下沈市場は、消費力が弱い都市の集まりです。それがなぜ、巨大な消費市場になり得るのでしょうか。

それはまず、人口です。二級都市までの大都市人口は約3.9億人ですが、下沈市場にあたる三級都市以下の人口は約10億人もいます。

しかし、人数が多いからといって、すぐに巨大な消費市場だと言うことはできません。個人の消費力は大都市部に比べて小さく、しかも人口密度が低いために、ビジネスの効率はよくありません。地方に出店をしても、商圏として確保できる消費者数はわずかです。交通の便も都市部に比べればよくありません。同じ売上を確保するためには、大都市の数倍の店舗を出店する必要が出てきます。

ところが、スマートフォンの普及により、この事情が大きく変わりました。下沈市場では、スマホ利用率も低いものの、人数にすると3.96億人がネット接続(主にスマホ)ができる状態になっています。ネット人口を比較すると、大都市が45.7%、下沈市場が54.3%と、ネットの中では、すでに下沈市場の方が優勢になっているのです。

スマホ利用者の人口で比べると、すでに三級都市以下の方が多くなっている

しかも、大都市ではこれ以上ネット人口は伸びません。頭打ちになっています。しかし、下沈市場では10億人の人口のうち、3.96億人しかネット接続をしていないので、まだまだ伸びる余地があるのです。

だからこそ、下沈市場が注目されているわけです。すでに大都市よりも大きな市場になっていて、今後の成長力も高い。

なので、実体小売店では下沈市場に参入することができません。人口密度が低い地方都市では、お客さんに来店してもらう必要がある小売店は効率が悪すぎるからです。一方で、お客さんに来店をしてもらう必要がないネットサービスにとっては、巨大な消費市場が生まれたことになります。

ネットサービスは、大都市を中心に発展してきましたが、すでに頭打ち状態になっています。しかし、大都市よりも大きな市場がまだ中国には存在していた。フロンティアが残っていたと注目されているのです。

従来は一級都市、二級都市を狙うのがビジネスの常道でした。しかし、これからは三級都市に下げていかなければならない。狙う市場を下に沈めていく必要がある。それで下沈市場と呼ばれています。

では、下沈市場の消費者の消費力はどうなのでしょうか。地方では収入そのものが低い。確かにその通りです。しかし、近年、中国の人件費は高騰をし続け、都市と地方の格差は急速に小さくなってきています。

調査会社「企鵝智庫」のレポートによると、下沈市場の収入は大きく伸びてきています。18歳から30歳までを「下沈青年」、31歳から45歳までを「下沈中年」として、分けて比べてみると、下沈中年の収入分布はもはや都市と遜色がありません。違いは高給を取る人が少ない程度です。

平均の消費額を比べても、都市が4055元、下沈中年は3230元と格差は解消されています。地方都市は大都市に比べて物価も安いので、生活感覚ではもはや大きな違いはなくなっています。

Next: このように下沈中年の消費力が上がっているのは、地方都市で稼げるように――

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