最悪な経済状況の中でも相場は上昇を続けます。ダウ平均、日経平均ともに年初来の水準を回復する勢いです。
このような時に、特に好調なのが「高PER銘柄」です。高い成長性が買われ、株価は青天井に伸び続けます。銘柄で言えば、エムスリー<2413>や、IRジャパン<6035>などが挙げられます。これらを見ていると、「もうバリュー投資なんかやめて、高PERの成長株を買えば間違いないじゃないか」と思ってしまいがちですし、実際にそのような言説が多く見られます。バフェットですら方々で揶揄されている状況です。
これらの企業が業績を伸ばしていることは間違いありません。そうなると「もう下がることはないんじゃないか」と思ってしまいがちですが、ここに大きな落とし穴があります。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
先月よりはマシだが……相反する医療崩壊と経済再生対策
最悪な経済状況の中でも相場は上昇を続けます。ダウ平均、日経平均ともに年初来の水準を回復する勢いです(編注:原稿執筆時点2020年6月7日)。

NYダウ 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)
6月5日(金)に発表された5月米雇用統計では、失業率が13.3%と前月から減少し、増加を見越していた市場の予想を上回りました。これが株価の上昇に拍車をかけています。
しかし、冷静に考えると失業率13.3%はとてつもなく高い数字です。4月は「異常値」と言えるものでしたが、それがわずかに解消されただけにすぎません。市場予想も悲観に偏りすぎていたところがあります。

出典:JETRO
ニューヨークでは3月22日に突然のロックダウンが開始され、雇用も慌てふためくしかなかったでしょう。その後失業した人は食品配達などの新たな仕事を探すでしょうから、時間が経って回復するのは自然なことです。
問題は、経済状況の悪化が今後ほかの分野へも拡がることです。
今は直接的な影響を受ける観光や飲食店がクローズアップされますが、やがては広告や設備投資の減少などを通じてあらゆる分野に拡大していくでしょう。そこで新たな失業者が生まれることが考えられます。
したがって、見るべきはピークではなく、その期間です。
経済が不調な期間が長引けば長引くほど、企業は苦しくなっていきます。一方で、新型コロナウイルスの医療崩壊を抑えるのに必要なのはピークを抑えることですから、両者は利害が相反するのです。