「変人の会社」から「普通の会社」へ
一つの仮説として考えられるのが、カリスマ経営者から普通の経営者に交代することによって、投資家から見て「普通の会社」になることです。
カリスマ経営者は良くも悪くも常人とは違った考え方をするので、動きを予測することが難しくなります。予測できないということは「リスクが高い」ということです。もちろん、常人と違うからこそ飛び抜けた成果を上げられるのですが、人は根本的に「リスク回避的」なため、敬遠してしまう投資家が多いのです。
株主還元の考え方も独特です。自信にあふれる経営者は、株主還元にお金を回すよりも、そのお金を拡大投資に充てた方が有利だと考えています。実際に、ソフトバンクの配当性向は10%と、平均を大きく下回ります。
アップルのケースでは、ジョブズは過去の苦い経験から、できるだけ現金を手元に置いていたいと考えていたと言われています。ジョブズの死後アップルは配当を再開し、株価の上昇に大きく貢献しました。
普通の経営者に交代すると、経営のリスクが下がり、株主還元が充実する可能性があります。これは会社が「開拓期」から「収穫期」になると言っていいでしょう。そして、多くの投資家にとっては収穫期の方が魅力的に映るのです。

ソフトバンクグループ<9984> 月足(SBI証券提供)
ソフトバンクはアリババやスーパーセル、ガンホーの売却により、1カ月で2兆円もの現金を手にしました。これは、アローラ氏主導によるものだと言われ、これまでの成果の一部を「収穫」したと言えます。このままアローラ氏が後を継いでいたら、本格的に収穫期に移っていたかもしれません。
孫社長の続投によりソフトバンクの収穫期は当分先になりそうですが、その分まだまだ市場を賑わせてくれそうです。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2016年6月24日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。