戻り売りが有力だが、近年は「戦争=株高・ドル高」の構図も
「地中海の米軍艦船がシリアの軍事施設を標的に巡航ミサイルを60発超発射」との速報が入り、ドル円が急落。本校執筆時点(7日12:50時点)のレートは1ドル=110.50円近辺となっています。
冒頭でも書いたように、利上げ動向を見極めるのが難しくなって将来的な金利展望が描けなくなったこと。また、米軍によるシリア攻撃という大きめなノイズがあったことを考えれば、ある意味で過去の数字である3月雇用統計を元に短期的に相場を動かしていくという状況ではなさそうです。
となると、ポジションを大きく傾けられないために動きにくくなるわけですから、強弱どちらかによほど偏った数字が出なければ、発表直前の水準に帰着する全戻しパターンの可能性が最も高いと考えています。
また、これまで初動は非農業部門雇用者数の数字に影響されることが多かったのですが、先月、先々月辺りからは賃金上昇率の数字で初動が決定されている感がありますので、今回もそうなると思われます。
そして、メインシナリオは先行指標の強さから、非農業部門雇用者数、賃金上昇率共に予想並かそれ以上の数字が出て、やや強めの値動きが出ることを想定しています。
これらのことを踏まえたうえで今回の雇用統計のトレード戦略について考えると、やはり有力なのは戻り売り(ショート)ということになります。上値目処は、今週の高値となった111円半ばから21日移動平均線(111.97円)のある112.00円がせいぜいと予想しています。先週も112円台での定着には失敗していますからね。したがって、賃金上昇率が前月比+0.5%といった数字が出てこない限りは、この辺りから狙っていきたいところでしょう。
ただし、早ければ今夜から、あるいは来週以降は株価が大きく上昇する可能性があるため、NYダウ先物などが昨日の終値である20,662ドル台をしっかり上回っているようなら、戻り売りは控えた方が無難です。
これは近年では戦争=株高という構図ができあがっており、ドル円も株価に引っ張られて短期的な上昇トレンドを形成することがあり得るためです。特にシリアはアメリカ本土からも離れていますし、不確定要素がほとんどありません。仮に大規模な戦闘が続くといった話になれば、軍需関連を中心に株は買われることになるでしょう。実は、リスクを完全に算定できない金融危機の方が相場にとって悪材料なのが現実です。

米ドル/円 日足チャート
このほか、賃金上昇率がマイナス圏になるといった非常に弱い数字が出て大台となる110.00円ラインを割り込んだ場合には、ストップロスを巻き込んで一段下に落ちることになるでしょう。下値目処としては上記チャートに示されている200日移動平均線(108.52円)が挙げられます。ここは、昨年11月のトランプラリーから一度も割り込んだことがありませんので、110円割れの水準からエントリーしてトレードする際には、この手前で一旦利食いすることを検討していただければと思います。
やはりドル円は上昇するスピードよりも下落するスピードの方が速いですから、こういった不確定な局面では、ショート(売り)を基本にしてトレードしていきたいところです。しかし、あくまで全戻し想定ですので、下落した場合のツッコミ売りをする際には要警戒ということで。
それから、繰り返しになりますが、米中首脳会談やシリア攻撃などセンシティブな話題を控えており、今夜は雇用統計がメインとならない可能性は十分ありますので、無理をせず柔軟に対応することを心がけましょう。それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年4月7日)
※太字はMONEY VOICE編集部による
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