記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年10月8日, 9日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです
アベノミクスは誰のための政策なのか?冷静に損得勘定してみよう
海外からの投資が少ないのは当たり前
安倍政権の経済政策の「全て」が間違っている理由は簡単です。目的をはき違えているのです。
そもそも、デフレーションとは、国民が貧困化する(国家全体ではGDPが減る)経済現象です。問題は、国民の貧困化であり、「株価が低い」「対内直接投資が少ない」といった話は、本質でも何でもありません。
というよりも、デフレで需要が縮小している国に対する、海外からの投資が少ないなど、当たり前です。何で、儲からない国に投資をしなければならないのでしょうか。
グローバル投資家のための政策ばかり
ところが、安倍政権は「国民の所得を実質値で引き上げる」という正しい目標に背を向け、グローバル投資家を利する、
- 法人税は無条件で引き下げなければならない
- 労働規制緩和で、派遣労働を拡大する
- さらに、残業代ゼロ制度を導入する
- 金融緩和で円安をもたらし、外国人株主の買いを増やし、日経平均を引き上げる
- 同じく円安で、外国で稼ぐ企業の日本円建て利益額を膨らませる
- コーポレートガバナンスだ何だと、企業をROE(自己資本利益率)重視の経営に走らせる
- 年金や中央銀行も、日本株を買うことで株価引き上げに貢献する
といった政策を推進してきました。
上記は全て、企業の「純利益」を増やす政策になります(及び株価上昇)。
重要なのは「誰のために行われたのか」
別に、企業の純利益を増やすこと自体を問題視したいのではありません。誰のために、行われたのか。が、ひたすら問題なのです。
誰のための、純利益拡大なのか。もちろん、配当金の支払いや自社株買い、株価上昇により「自己利益」の最大化を果たせる、グローバル株主のためです。
安倍政権の経済政策の目的は、グローバル株主の利益最大化だったのです。
大本の目的が間違えている以上、

出典:三橋貴明公式ブログ『新世紀のビッグブラザーへ』
のごとき惨状になってしまったとしても、むしろ当たり前なのでございます。
デフレ化政策が招いた、日本の貧困化と少子化
ちなみに、新自由主義的(グローバリズム)的な理想の税制は、法人税と所得税ゼロ、税金は「人頭税」で賄うです。
もっとも、人頭税は国民の反発が大きいため、代わりに「法人税引き下げの代替財源」として広まっていったのが、「消費税」なのでございます。
国民はグローバリズム=デフレ化政策の下で、社会保障を削られ、消費税を増税され、企業の労働分配率を引き下げられ、ひたすら貧困化していきます。
つまりは、人件費が下がっていくわけです。
「人件費が下がることは素晴らしいことだ。何しろ、グローバルな国際競争力(=価格競争力)が上がる」という理屈で、我が国において、ひたすら「グローバル株主」を利する政策が行われてきました。
結果的に、若い世代の所得が下がっていき、結婚が減り、少子化が止まらない。日本の少子化は、政府のデフレ化政策の当然の結末なのです。
この現実に国民の多数派が気が付かない限り、我が国の国民の貧困化と少子化、そして「小国化」は終わりません。
Next: では希望の党の公約「ベーシックインカム」は誰のためのもの?実は…