もしも、アメリカが一つの企業だとしたら?今回はいつもと趣向を変えて、アメリカという国の財政状況を企業の決算に見立てて解説してみましょう。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)
※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2019年7月16日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
23%の赤字をアメリカは改善していくことができるのか?
Q. アメリカを一つの企業として見た場合の営業利益率は?
今回もMary Meeker氏による「Internet Trends 2019」の中から一つ興味深い話題を取り上げてみたいと思います。
ちなみに、Mary Meeker氏はネットやモバイル系のベンチャーキャピタリストの第一人者で、以前所属していたKleiner Perkinsは、Airbnb、Docusign、DoorDash、Facebook、Slack、Spotify、Square、Twitter、Uberなど私の記事でもよく取り上げる多くの企業に投資をしています。
Internet Trendsは、1995年からアーカイブされています。今日は毎年私が楽しみにしているセクションで、「アメリカという国家を一つの会社だと見た場合にどのような収支になっているのか」ということを解説するコーナーを取り上げてみたいと思います。
※参考:Internet Trends 2019
アメリカという国家のPLを見てみると、このグラフにあるように過去50年のうち45年間も赤字を出している会社だと言うことができます。
アメリカの国家としてのPL
アメリカのPLを詳しく見てみましょう。

出典:同上
歳入(収入)は全部で$3.3T(約330兆円)あります。内訳としては個人からの税収が51%、年金や医療費が35%、企業からの税収が6%、その他が8%になっています。
トランプ政権において2018年度から企業に対する税率が20%まで下げられたこともあり、2013年と比較して企業からの税収が全体に占める割合が10%から6%へと大きく減っているのが特徴的です。
支出は合計で$4.1T(410兆億円)。その内訳は「Entitlement(エンタイトルメント=権利を与える、受給資格という意味)」と呼ばれる、社会保障や医療費などの給付金が61%、国防費以外の教育費や道路整備の費用などの合計が16%、国防費が15%、国債に対する利払いが8%という内訳になってます。
全体としては、2018年度の決算は利益率がマイナス23%という赤字企業になっていることがご理解いただけると思います。
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