アメリカの医療システム
アメリカの医療費をもう少し詳しく見てみましょう。

出典:同上
左のグラフは、緑が国家レベル、赤が州レベル、青がアメリカ全体の政府の支出における医療費関連の費用の割合を示したものです。いずれも右肩上がりで大きくなっています。
右のグラフは、GDPに占める医療関連費用を表したものです。アメリカは先進国の中ではずば抜けて高い割合になっており、GDPの約20%弱が医療費に費やされている国です。
ちなみに、2位スイス、3位フランス、4位ドイツ、5位スウェーデンと続き、日本は6位で10%程度が費やされています。

出典:同上
冒頭で書いたとおり、アメリカというのは基本的に健康保険は自己責任で加入・購入する必要があります。このグラフは、健康保険の提供者別の加入者の割合を示すグラフです。
青い部分は勤務先の会社が提供する健康保険に加入している人の割合で、10年前と比較して減少していることがわかります。一方で真ん中の緑の部分は政府が提供する健康保険を享受している人たちで、この層は大きく伸びていることがご覧いただけるかと思います。上段のグレーの部分は個人で健康保険に加入している人の割合です。
健康保険を自由市場に任せてしまった結果、高齢者や低所得者など自分で健康保険に加入できない人が、政府から提供される健康保険に依存し、その人達の数がどんどん増えているというのが今のアメリカの現状です。
アメリカの医療エコシステムの最大の問題点
アメリカの医療エコシステムが、いかに大きな問題を抱えているかということをもう少し見ていきたいと思います。

出典:同上
左側のグラフは、本来(きちんとした医療が行き届いていれば)防げたと推測される10万人当たりの死亡者数を表しています。
ご覧いただければわかるとおり、先進国の中でアメリカは最もこの数が多く、国家レベルでこれだけ費用がかかっているにもかかわらず、最低限の医療が行き届かずに亡くなってしまう人がとても多い国なのです
右側のグラフは、国全体の医療費におけるAdministrative(=管理コスト)の割合です。
このグラフの中で再下段に掲載されている日本は約1%程度のコスト比率で最も効率的な管理をしています。対照的に、アメリカは医療費のうち約8%がAdministrative(管理)に費やされてます。
つまり、医療システムや保険制度の管理体制がボロボロで高コスト体質であるため、最低限の医療が行き届かずに死んでしまう人が先進国で最も多いだけでなく、国家としての医療費も右肩上がりで増え続けており、医療という観点において最も不幸な国がアメリカだと言えるのではないでしょうか。
そんなアメリカの医療システムですが、アメリカが得意とするイノベーションによって改善される可能性が今後あるかもしれません。
以下では、アメリカらしい特徴的な事例を紹介しておきたいと思います。