ヘリコプターマネーを「封印」していたバーナンキ前FRB議長
でもなぜこの時期に、わざわざバーナンキ前FRB議長は来日したのでしょう。
すでに安倍政権には、重要な経済政策の発表にあたって、ノーベル経済学者を招いたという「過去」があります。消費増税の先送りを決めたときです。
当時は、ポール・クルーグマン米プリンストン大教授が「消費増税は先送りすべきだと言ったから」なんて論理だったでしょうかね。
しかし実は、バーナンキ前議長が2002年9月に理事としてFRBに入ってから、ヘリコプターマネーについて公式に触れたのはたったの一度きりなのです。2006年2月にFRB議長になってからは、ヘリコプターマネーへの言及を封印しています。
もし今回の訪日で、バーナンキ氏が、安倍総理や黒田日銀総裁にヘリコプターマネーの話をしているとするなら、「なぜ本国でもやらなかったことを日本にやらせるのか」という疑問が残ります。
日本がバーナンキの「壮大な実験場」に?
これについては、日本を「壮大な実験場」にしようとしているのではとの指摘があります。
そもそもリーマンショック後の、アメリカにおけるQE1からQE3にかけての膨大な量的緩和政策は、「世紀の大実験」と言われてきました。現在は、その出口戦略にどう立ち向かっていくかが試されているわけですから、「日本市場で、さまざまな実験を行いたい」というのはアメリカ側の本音とも言えるでしょう。
実際にバーナンキ氏が「日本という市場を使って持論の効果を試したい」とまで思っているかどうかは知る由がありませんが、少なくともアメリカ当局は間違いなく、来る景気循環での景気減速(リセッション)に向けて、何らかの対策を講じなければならないと思っているはずです。
それがFRBによる金利政策、つまり利上げであり、次の景気減速に対応するために、いまのうちに金利の下げ余地を持っておこうとしているのですが、世界情勢から思うようにいきません。
そこで次の手としてヘリコプターマネー政策を検討しているのではないか?ただ、それはかなりの危険をはらむので、まず日本で実験してから考えようとアメリカは考えている――というのは穿ちすぎた考えでしょうか?
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2016年7月18日号の一部抜粋です。興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『らぽーる・マガジン』(2016年7月18日号)より一部抜粋
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