フィードバック・ループの正と負の性質
永久ループというと、同じところをクルクルと回っているようなイメージですが、正確には異なります。
社会に参加している人間は、「本当の現実」を誰もわかりません。現実という全体の中の一部として人間が参加しているため、現実全体を把握できないのです。
そのため、認知機能にインプットしている「現実」は、正確に言えば「現実」ではなく「現実’」となります。
そのため、次のように認知機能と操作機能の相互ループによって、現実がどんどん変化していきます。
- f(現実’)⇒認識⇒g(認識)⇒現実”⇒f(現実”)⇒認識⇒g(認識)⇒現実”’…
株式市場で言えば、次の通りです。
- (現実’)Z社の株価100ドル⇒(認知)価値がある⇒(操作)買う⇒
- (現実”)株価が120ドルに上昇⇒(認知)価値がある⇒(操作)買う⇒
- (現実”’)株価が140ドルに上昇⇒(認知)価値がある⇒(操作)買う⇒…
ソロスはさらに洞察を進めて、再帰性のループには、次の2種類の方向が存在することを発見しました。
<負のフィードバック>
参加者の現実に対する見方が現実の状況に接近するという性質
<正のフィードバック>
参加者の現実に対する見方が現実の状況から乖離・拡大するという性質

【図解3】フィードバックの種類
正と負のイメージが湧きにくいかもしれません。正はプラスで、負はマイナスです。次のようにイメージしましょう。
<負のフィードバック>
「本当の現実」という円の大きさに対して、人間が認知した「現実’」の円の大きさが近づいていく現象
<正のフィールドバック>
「本当の現実」という円の大きさから、人間が認知した「現実’」がどんどん大きくなっていく現象
ソロスはこの2種類のフィードバックを、次のように考えました。
- 負のフィードバックは自己修正的で、いつまでも続くことが可能である。
- 正のフィールドバックは自己強化的でどんどん拡大していき、永続的ではない。やがて事象の参加者の認識が限界に達してしまう。
そしてソロスは、正のフィードバックは「バブル構造」そのものであると見なしました。最初は自己強化的にどんどん大きくなり、最後は自己破壊的に転ずるのは、金融市場におけるバブル構造そのものというわけです。