日経平均株価は「ユニクロ指数」
ファストリが下方修正を発表した翌日、株価は2.6%「上昇」しました。下期が赤字になると発表したとは思えない反応です。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)
これが「悪材料出尽くし」なのか「将来への期待」なのかはわかりません。単純に相場全体の雰囲気に流されただけとも考えられます。株価の動きとはそれほど読めないものです。
ただし、同社の株価が特異な状況にあります。その最大の要因が「日経平均株価」です。
日経平均株価は、必ずしも相場全体を示す指標ではありません。採用銘柄の株価を単純平均するため、単価の高い「値がさ株」の影響を受けます。
ファストリの株価は現時点で約5万円と、平均(2,000円弱)から大きく乖離しています。その結果、ファストリは日経平均の約10%を占め、日経平均は「ユニクロ指数」とも言える状態となっているのです。
それだけなら株価への直接的な影響はないのですが、ここへ「日銀のETF購入」が絡み、話がややこしくなってきます。日銀は日経平均ETFをたくさん買っていましたから、間接的にファストリ株を大量に買う羽目になってしまったのです。
日銀買いの弊害と株価下落リスク
すでに同社の20%は日銀が保有していると言われます。日銀は主に株価が下がった時に購入します。したがって、投資家の間に「下がっても日銀が買う」という奇妙な安心感が醸成されているのです。
そのせいか、ファストリのPERは常に30~40倍で高止まりしてきました。

出典:バフェット・コード
そのせいで、私たちバリュー投資家にとってはまったく買い場がない状況が続いています。いわば、買い場を日銀に奪われているのです。
日銀は、新型コロナ・ショックを受けてETFの買入額を年間6兆円から12兆円に倍増させました。今回の株価上昇も、投資家による日銀への期待と無関係ではないかもしれません。
ただし、2018年7月以降、日銀は日経平均ETFの購入割合を全体の5割から1割に引き下げています。すなわち、それ以降ファーストリテイリングに偏って買っているということは必ずしもなくなっているのです。
もし、投資家が惰性で株を買っているとしたら、急落時に思ったように日銀が入らずパニックを引き起こす可能性があります。買い手がいなくなれば、株価はこれまでのコンセンサスを超えて一気に下がることになるでしょう。
ただでさえ割高な株価ですから、この点は忘れてはいけないリスクとなります。
もっとも、そうなったときは、私たちバリュー投資家にとっては大きなチャンスです。良い銘柄なのは間違いありませんから、株価が落ちてくるのを虎視眈々と待っていたいと思います。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年4月22日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。