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ソフトバンクグループ巨額赤字は何が危険? 孫社長を悩ます「解体」の二文字=栫井駿介

ビジョン・ファンドが背負う4兆円の「隠れ債務」

しかし、これはあくまでビジョン・ファンドの失敗であり、もしファンドの価値がゼロになったとしても、最大損失は3.2兆円までです。アリババの16兆円がある限り、ソフトバンクグループの財務には大きな影響はないのです。

ただし、このビジョン・ファンドには数字以上に厄介な仕組みがあります。

ビジョン・ファンド10兆円の構成は、ソフトバンクグループなどが持っている、議決権のある普通株式が6兆円、議決権のない「優先株式」が4兆円です。

優先株式は主にサウジアラビアの政府ファンドが出資しています。この優先株式に対しては、年間固定の7%配当を支払い続けないといけないという決まりがあります。

すなわち、年間3,000億円は外部に確実に支払わなければならないものです。

普通株式の配当は会社が決められるので、業績次第で上げたり下げたりすることができますが、優先株式の配当は下げられません。これでは、株式というより、確実な支払義務を負う「債務」に近いものです。

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これを見る限り、ビジョン・ファンドは、「優先株式」という名を借りた隠れ債務を使って、「レバレッジ効果」によって大きく膨らましたにすぎないことが理解できます。

IPOができない中で、優先株式の配当をどう払う?

優先株式の配当は、ビジョン・ファンド内で支払わなければなりません。これまではIPOなどで売却した資金を配当に回すことができましたが、この経済環境ではIPOどころか、投資先企業が次々に潰れてしまいかねない状況です。

ファンドが現金を生み出すことが出来なければ、いよいよ配当が支払えないということになってしまうのです。

配当を支払えないとなると、お金を借りて配当を支払わなければなりませんが、今の金融環境では、配当のためにお金を貸してくれる金融機関や銀行があるとは思えません。

もうひとつの手段としては、「ギブアップ」です。すなわち、ビジョン・ファンドを破綻させてしまうということです。

そうなると、先ほど説明したようなこの普通株式の部分が無くなり、残っている優先株式を持っている外部株主が普通株主となります。ファンドに残った企業を売却するなりして、残った資金を回収することになります。

損切りとなり、ソフトバンクグループとビジョン・ファンドは切り離されます。ビジョン・ファンドの3.2兆円は損失となりますが、それ以上の損失は免れるのです。

しかし、もしこれを実際にやってしまうと、金融業界におけるソフトバンクの信頼性が地に落ちてしまいます。これからもビジネスを続けることを考えると、孫さんは絶対にやりたくないでしょう。

Next: 最後に取れる手段は、ソフトバンクグループ本体がこのファンドに対して――

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