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なぜ日本人はワクチンに否定的?もたつく菅政権を尻目に中印露は「ワクチン外交」に全力、途上国の取り込み合戦へ=原彰宏

ワクチン外交「中国 vs インド vs ロシア」

世界各国が新型コロナウイルスワクチンの確保に悩む中、新興・途上国を中心に中国製のワクチンが浸透し始めています。

インドで製造された英アストラゼネカ社のワクチン60万回分が、ガーナに空輸されました。アフリカにワクチンが上陸したのはこれが初めてです。

ロシアのワクチンは、突然変異したウイルス情報を、短期間で書き換えることができるといいます。英国で有効率91%の評価を受けました。

中国・インド・ロシア製ワクチンが、世界に(特に発展途上国を中心に)供給されているのです。赤道直下から南半球は、中・印・露製ワクチンが流布しています。

欧米がワクチン供給で自国と先進国を優先する中、“ワクチン外交”で中国の存在感が増しています。

このことが報道されてもなお、欧米は自国優先でワクチン確保に動いているわけで、もはや世界戦略ということでは、中国には太刀打ちできないところまで、その差は開いてしまいました。

お金と健康を、中国は発展途上国において、しっかりと掴んだのです。

したたかな中国のワクチン外交

習近平指導部にとって、中国製ワクチンは国力を内外に示し、「パンデミック(世界的大流行)の震源地」という負のイメージを払拭する絶好の材料でもあります。

今後、エネルギーや技術といった分野の投資機会の確保につなげたり、すでに融資先となっている貧困国には債務免除までちらつかせたりしているようで、何かで中国が領有権問題など国際的論争を招く事態に直面した際には、中国支持に回ってもらいたいといった打算が背景にあるのではとの指摘もあるようです。

先進国だけでなく、発展途上国にも広くワクチンを供給する仕組みとして、各国が共同出資する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」があります。

ただワクチン製造は先進国によるもので、どうしても供給量が限定され、時期も先進国都合で未定となっています。そのため、東南アジアを中心に、多くの国が中国製ワクチンの導入に動いているのです。

しかも中国は無償提供です。中国は、財政基盤の弱いミャンマーやカンボジア、ラオスに対し、ワクチンの無償提供を打ち出しています。セルビアやブルネイ、インドネシア、フィリピンにも、中国国営製薬会社シノファームのワクチンを提供支援しています。すでに、南米のチリやブラジル、エジプトやバーレーン、ヨルダンやUAEなどのアラブ諸国、タイやフィリピン、ベトナムやミャンマーなどのASEAN諸国が中国製ワクチンの導入を決定しています。

日本では米国や英国のワクチンを採用していますが、欧米諸国のワクチンと比べると、安い値段で手に入る中国製ワクチンは発展途上国にとって魅力的であることは間違いありません。

各国とも早急に手に入れたいことから、ワクチンを巡る競争では中国の存在力が目立つというものです。中国政府は、広域経済圏構想「一帯一路」の実現に向けて築いてきた各国との協力関係を生かして、売り込み攻勢をかけています。

ドイツ国際政治安全保障研究所のモーリッツ・ルドルフ氏は「健康保険分野は、一帯一路の多くの目標の一つにすぎなかったが、パンデミック以降、重要な焦点になった」と指摘しています。

そこに割って出てきたのがインドです。

Next: ジェネリック医薬品大国インドも中国に対抗。日本は……

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