日銀の金融政策に限界が来ている
大前:日銀の黒田総裁は、日銀のETF購入について、「経済や物価にプラスの影響を与えることが目的」だと述べています。
もちろん「株価を支えるため」という思惑がまったくないのか?といえばウソになるでしょう。とはいえ、今回のコロナ危機が早期に収束しない見通しであることは、黒田氏も会見時に言及しています。
今回の対応は、短期的な株価の動向よりも、日銀の役割として、
・企業活動を滞らせないための資金の流動化
・金融市場に起きているショックを沈静化させること
…に徹した結果だということが、政策決定会合後に行われた記者会見での談話から浮かび上がってきます(日経新聞Web版、2020年3月16日)。
俣野:黒田総裁は、18日に行われた参院財政金融委員会の中で、「ETFの購入によって、含み損が2~3兆円になっている」と発言しましたね。
大前:先ほどの黒田氏の発言にもあったように、もともと、日銀がETFを購入してきた目的とは、日銀が株を買うことで、企業がそのお金を設備投資に回したり、社員の給料を上げるための資金に回すだろう、と期待してのことです。
ところが、大多数の企業は、お金をそのようには使いませんでした。多くは、内部留保で貯め込んだり、自社株買いをするための資金に充てられました。
2019年9月、財務省が発表した法人企業統計によると、2018年度の企業による内部留保(利益剰余金)が、7年連続で過去最大を更新(金融・保険業を除いた全産業ベース)。
上場企業の2019年度の自社株買い計画に至っては、同年5月21日時点で約3兆4000億円と、前年同期比9割増と急増しました(日経新聞Web版、2019年5月22日、9月2日)。実のところ、18年度の自社株買いの総額は、日銀のETF買い入れ額を上回っていたのです。
これが、市場にお金が流れず、物価が上がらない、従業員の給料も上がらない一因となってきたわけです。
俣野:日銀による金融政策の限界、ということですね。
今はまだ、ショックの只中にある
3.我々は、この危機にどう対応すべきか?
<ポイント:次の時代のニュー・ノーマルとは何か?>
大前:この自社株買いについては、今、アメリカでも大きな問題となっています。確かに自社株買いをすることで、1株あたりの価値が上がり、経営指標も改善したり、敵対的買収を防ぐといった効果もあります。
一方、自社株買いで企業価値が上がれば、株主は高配当をもらえます。設備投資などを行うよりも、自社株買いで手っ取り早く利益を得ようとするほうが確実だ、という易きに流れる風潮が、アメリカの企業界にあったのは事実です。
このようにして上がった株高は、再選を狙うトランプ氏にとっても、非常に都合のいいものでした。
俣野:でも、状況は変わってしまった、と――
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『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2020年4月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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