2017年の注目ポイントと推奨銘柄
それでは2017年に私が注目するポイントです。
注目ポイントその1:電力セクター
2011年の東日本大震災を発端とする福島第一原子力発電所の事故で、全国の原子力発電所が運転停止を余儀なくされ、電力会社は大きな損失を計上しました。株価は大幅に下落し、長い間低迷が続いています。
電力会社は地域独占が許され、安定的な電気料金収入があることから、本来投資対象としては非常に優れた銘柄です。一方で、特に企業努力をしなくても安定した利益をあげられたため、経営改善努力や競争意識が働きにくく、株価も大きく上昇しないのがネックでした。
しかし、原発問題で経営が窮地に立たされることで、これまで無縁だったコスト削減努力や競争的な戦略を実行するようになりました。数千億円単位でのコスト削減を実行し、電力以外の分野や担当地域外へ進出するようになったのは、これまでにはない大きな変化です。
もっとも電力会社の業績改善の最大のポイントは、原子力発電所の再稼働です。稼働していない原子力発電所はコストを垂れ流し、電力会社は火力発電に要する燃料を購入しなければなりません。逆に考えると、原子力発電所が再稼働すれば、電力会社の業績は大きく改善するでしょう。
その中で、私が最も着目しているのが九州電力<9508>です。日本で唯一稼働している川内原子力発電所を有し、コスト削減や首都圏への進出と積極的な経営を進めています。
トランプ相場で既に多少上昇していますが、まだ十分に割安な水準にあると考えています。

九州電力<9508> 月足(SBI証券提供)
注目ポイントその2:内需、消費者、独占
「注意すべきポイント」として挙げた「輸出」「設備投資」「開発競争」の反対が注目すべきポイントと考えます。どちらかと言うと、普遍的な要素が強いかもしれません。
この条件を満たす銘柄は、為替や景気、競争環境の影響を受けにくく、安定した利益を生み出し続けることができます。生み出した利益を得意分野に再投資すれば、雪だるま式に企業の価値が膨らんでいくというわけです。
実は、バフェットもそのような考え方で銘柄を選定していると推察しています。(バフェット銘柄の代表格と言えば、ウェルス・ファーゴ、コカコーラ、アメリカン・エキスプレスなどですが、いずれもこれらの条件に当てはまっています。)
これらを踏まえた推奨銘柄は、つばめ投資顧問サービス・会員限定レポートで紹介しています(お申込みフォームの備考欄に「特別レポート希望」とご記入ください)。
注目ポイントその3:インターネットサービス
「IT革命」が叫ばれて久しいですが、ITバブルの崩壊やスマートフォンの普及を経て、その勢いは一時期より減速したという見方も少なくありません。しかし、私は長期のトレンドの中ではまだ序盤戦だと考えています。
これまでインターネットサービスは若い人の間に浸透し、既存のサービスを代替することで成長してきました。一方で、企業や富裕層など、大きなお金が動く市場に対するアプローチが十分ではなかったように思えます。
インターネットの本格的な普及から20年近くが経過し、ようやく大きなお金が動く分野へも拡大しているように思います。
高額商品をインターネットで購入することに抵抗がある人が多かったようですが、今では家具屋家電など数万円単位の商品でも、アマゾンでワンクリック購入するようになっています。
企業活動も、自宅勤務やタブレット端末の使用など、インターネットを使えば相当効率化の余地が残されています。普及に伴い、セキュリティの強化やインターネット広告はまだまだ成長の余地があると考えられます。
ただし、インターネット銘柄の選定は簡単ではありません。単なる期待感から実力以上に割高な株価がついていることが少なくないからです。その中から、本当に成長性が高く、利益を生み出す力のある銘柄を見つけ出すのは容易ではありません。
そこで注目すべきなのは、どれだけ人々の生活や企業活動に深く浸透しているかです。現段階であまり利益が出ていなかったとしても、すでに欠かせないものとなっているのならば、利益に結びつけるのはそこまで難しいことではないからです。
インターネットサービスは、1つの企業が市場を独占しやすい業界です。いちどその地位を築いてしまえば、なかなか覆されるものではありません。専用のアプリからサービスを利用することが多いスマートフォンの普及は、その傾向に拍車をかけるでしょう。
その特徴に最も当てはまる銘柄はつばめ投資顧問サービス・会員限定レポートで紹介しています(お申込みフォームの備考欄に「特別レポート希望」とご記入ください)。
いつでも動ける資金と心の準備を
ここで紹介している銘柄は、あくまで現時点でのものです。マーケットの動きにより、割安な銘柄が新たに出現したり、割安なものが割高になったりします。重要なのはマーケットの動きに敏感になり、チャンスがきたらいつでも動ける体制を整えておくことです。
2017年も、バリュー株投資とつばめ投資顧問を、どうぞよろしくお願いします。
つばめ投資顧問は相場変動に左右されない「バリュー株投資」を提唱しています。バリュー株投資についてはこちらのページをご覧ください。記事に関する質問も受け付けています。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年12月27日)
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。