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ビットコインは「ノアの方舟」なのか? 出口なき緩和マネー大洪水を生き残る術

自国通貨を信用しない中国人にとって最大のインフレ・ヘッジ

世界経済が不安定になると同時に、ビットコインの持つ「資金の避難場所としての需要」が爆発的に拡大し、仮想通貨先進国の欧米では法整備が後手後手となり、資金の流出がコントロールできなくなっています。

特に、金融当局の監視が厳しい中国の富裕層にとって、ビットコインは必要不可欠の存在になっています。実際に、ビットコインの利用者の大半は中国人であると言われています。

数々の革命や政変を乗り越えてきた中国人は、もともと自国通貨の人民元を信用していないので、金(ゴールド)や不動産などの現物資産を海外に持とうとします。

しかし、それでさえ当局に把握されて、政変や経済崩壊が起これば、いつ何時、差し押さえされないとも限らないのです。

したがって、中央銀行制度の外側に置かれている仮想通貨システムは、無国籍の通貨を自由に売買できる点で、最大のインフレ・ヘッジになっているのです。

ビットコイン価格はなぜ年明け早々に暴落したのか?

今年1月5日、ビットコインの値が過去最高値から一気に23%も下落しました。

これは、ビットコインがあまりにも急激に上昇し過ぎたので、投機筋がリスク回避のために利益確定したことと、人民元が上昇したので、ビットコインを売って人民元に乗り換えようとする中国人富裕層が殺到したためです。ビットコインは、資産保全の手段と同時に、投機の対象にもなっています。

その1週間後、すかさず中国の中央銀行である中国人民銀行がビットコインの大手取引所の検査に入り、さらに、1ヵ月後には、国内の3大ビットコイン取引所にビットコインの引き出し停止措置を行いました。

「引き出し停止」とは、ビットコインを他の仮想通貨に移したり、ビットコインを他国の通貨に替えるために引き出しを行ってはならない、とするもので、ビットコインを人民元に両替して現金化したり、逆に人民元でビットコインを購入するのは自由です。

これは、中国の中央銀行が、いままで追跡ができなかった無国籍のビットコインの流れを掌握することによって、人民元による為替操作を政府の決断によってスムーズに実行に移すことができるようにしようということです。

ただし、人民元とビットコインとの交換については規制していないことから、中国も仮想通貨の利用拡大の流れに水を差すことはしたくないようです。

中央銀行とブロックチェーンとの対立が表面化

欧米は、今回の中国人民銀行の規制を中国の為替操作と捉えていますが、この見方は、ビットコインなどの民間の仮想通貨がもたらす大きな変化の一部を捉えたものに過ぎません。

つまり、中央管理システムから完全に切り離された仮想通貨こそが、中央銀行の通貨政策を脅かすことになり、ひいては、中央銀行制度そのものを崩壊させてしまうことが実証されたことによって、中央銀行とブロックチェーンとの対立が表面化したものと捉えなければならないのです。

一方で、中国は世界中から金(ゴールド)を買い集めています。とうとう、中国の公的金保有量は4000トンを超えました。

中国政府は、国民にも金(ゴールド)の保有を積極的に奨励しているので、全体ではおそらく1万トンに迫る勢いでしょう。

これは、去年9月、国際通貨基金(IMF)が、人民元を特別引出権(SDR)通貨バスケットに採用したことに対応したもので、ゆくゆくは、金(ゴールド)で裏付けされた人民元による通貨覇権を目論んでいることを如実に示しているのです。

中国の金融当局が、ビットコインが人民元と交換される分については口を差し挟まないのは、中国が独自の仮想通貨の発行を計画しているからで、今のところ、ビットコインを多くの国民の間に普及させることによって「仮想通貨の教育期間」と考えているからです。

ビットコインは、1月から2月にかけて大暴落を演じましたが、その後、高値を抜けて上昇し続けています。

Next: 中国と正反対。ロシアはなぜビットコインを恐れているのか?

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